最終更新日:2021/6/25
担当:福元

テーマ12 半導体素子

【目次】

【目的】

電子回路の基本であるトランジスタを用いることにより増幅器の特性を理解する。

【概説】

トランジスタ内部の動作は単純で、図のようにベース−エミッタ間に流れる 電流を常にコントロールして、その電流の数十倍から数百倍の電流が コレクタ−エミッタ間に流れるように電流源を制御する。 つまり、ベース電流でコレクタ−エミッタ間に流れる電流を コントロールする素子がトランジスタといえる。 この動作を外部からながめると、ベースに入力した電流が大きくなって コレクタ−エミッタ間に現れるので、入力信号を増幅したように見える。

トランジスタには、PNP型とNPN型の2種類がある。 3つに分かれたそれぞれの部分は、ベース、コレクタ、エミッタと呼ばれる。 エミッタ−ベース間は順方向、ベース−コレクタ間は逆方向になるように 電圧を加える。ベースに流れる電流IBに比べて、コレクタに流れ込む 電流ICは大きな電流となる。 この大きな電流ICは、小さな電流IBに従い変化する。 トランジスタが増幅作用を持つというのはこのことである。

【トランジスタの名称】

トランジスタ は、材料(ゲルマニウム,シリコン)や構造(NPN,PNP)など により分類される。また、使用方法としてエミッタ接地、ベース接地、コレクタ接地 がある。トランジスタには型名が付いているが、その付け方は、次のような 形式で決まっている。

2SC 2120 Y

2SA****PNP 高周波用トランジスタ
2SB**** PNP 低周波用トランジスタ
2SC**** NPN 高周波用トランジスタ
2SD**** NPN 低周波用トランジスタ

最大4桁の番号で、日本電子機械工業会へ 登録した順の連続番号。

改良や変更ごとにA,B,C,…の順に付ける。

【トランジスタの接続方法】

トランジスタの接続法には、 ベースを入出力側の共通端子とする ベース接地と、エミッタを共通端子とするエミッタ接地、 コレクタを共通端子とするコレクタ接地の3通りの接続法が 考えられるが、前者2つの接続法がよく用いられる。

図1:エミッタ接地の回路図

【実験】

トランジスタ 2SC2120 を用いてエミッタ接地回路における 出力特性、および入力特性を測定する。

 実験1    出力特性(Ic−Vce特性) の測定

  1. まず、RB = 100 kΩ の抵抗を用いて、図1 のような回路を組むことにする 。 (参考:カラー抵抗
  2. ランチャーの中から VPS(Variable Power Supply)を起動する。 VCCの電圧を図2 “A” のところで設定する。電圧値を入力後、Enterキーを押すとその電圧が反映される。
  3. 1 の端子a,bには、DMMの電流計が つながるように接続し(図3,4)、 電流IBを測定し、表1に記入する。このとき、電圧 VCC=0 [V]とする。
  4. 次に端子a,bは、図1 のように直結する形に戻し、端子c,dにDMMの電流計がつながるように 接続し(図5,6)、 電流ICを測定する。このとき、VCCは、 0〜6.0 [V]まで表1のように変化させて測定する。
  5. 抵抗RBを 51[kΩ],33[kΩ],22[kΩ]と変えてみて、同様に測定する。
図2:VPS


表1:出力特性の測定


 3: IB 測定のための回路

 4: IB 測定のための回路(写真)


 5: IC 測定のための回路

 6: IC 測定のための回路(写真)

 

 実験2    入力特性(Ib−Vbe特性) の測定

  1. まず、ELVIS上に図 7 のような回路を組む。 ( 7,8
  2. VBB=0.4 [V] のとき、電圧VCEを測定し、表2に記入する。 (図7,8
  3. VBBを 0.4〜0.64 [V]まで表2のように変化させ、 そのときのVBEの大きさを測定する。 (図9, 10
  4. VBBを 0.4〜0.64 [V]まで2-3と同様に変化させ、 そのときのVRBの大きさを測定する。 (図11, 12
  5. 抵抗RB の大きさをDMMを用いて測定する。
  6. IB= VRB/RB の式を用いてIBを計算する。


表2:入力特性の測定


 7: VCE 測定のための回路

 8: VCE 測定のための回路(写真)


 9: VBE 測定のための回路

 10: VBE 測定のための回路(写真)


 11: VRB 測定のための回路

 12: VRB 測定のための回路(写真)

【結果の処理と考察】

    

  1. 1 の 出力特性のデータを利用して、図13のような出力特性 (IC - VCE特性)のグラフを作成せよ。 ただし、ここでは、VCCの電圧をVCEと 見なすものとする。
  2. 2 の 入力特性のデータを利用して、 図14のような入力特性(IB - VBE特性) のグラフを作成せよ。
  3. 電流伝達特性は、コレクタ電圧を一定に保ち、 その状態におけるトランジスタのベース電流IBと コレクタ電流ICとの関係をいう。 出力特性のVCE=5 [V]に注目し、5 [V]に おける縦軸上で曲線と交わる点のIBとそれに対応する ICを読み取り、IBと ICとの関係を表す電流伝達特性の グラフを作成せよ。 ただし、IBを横軸に、ICを縦軸に取ること。
  4. トランジスタの電圧、電流を図15のように定めたとき次の式が成り立つ。
  5. vBE = hIE iB + hRE vCE
    iC = hFE iB + hOE vCE
    係数hIE,hRE,hFE,hOEhパラメータという。 実験で用いたエミッタ接地回路のhパラメータのうちhIEhFEの値を求めよ。
  6. hFEのことを別名日本語で何と言うか。

13:  出力特性 14:  入力特性

 15: エミッタ接地の回路


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