最終更新日:2023/6/14

テーマ9 半導体素子・アナログ電子回路のマルチシム

【目次】

【目的】

半導体素子(バイポーラトランジスタの特性)、アナログ電子回路についてNI MultiSIMを利用してシミュレーションを行い、その理解を深める。

【概説】

トランジスタ内部の動作は単純で、図のように ベース−エミッタ間に流れる電流を常にコントロールして、 その電流の数十倍から数百倍の電流がコレクタ−エミッタ間に 流れるように電流源を制御する。 つまり、ベース電流でコレクタ−エミッタ間に流れる電流を コントロールする素子がトランジスタといえる。 この動作を外部からながめると、ベースに入力した電流が大きくなって コレクタ−エミッタ間に現れるので、入力信号を増幅したように見える。

トランジスタには、PNP 型とNPN 型の2種類がある。3つに分かれたそれぞれの部分は、ベース、コレ クタ、エミッタと呼ばれる。エミッタ−ベース間は順方向、ベース−コレクタ間は逆方向になるように電 圧を加える。 ベースに流れる電流 IBに比べて、コレクタに流れ込む電流 ICは大きな電流となる。この大 きな電流 ICは、小さな電流 IBに従い変化する。トランジスタが増幅作用を持つというのはこのことである。

【トランジスタの名称と形状】

トランジスタは、材料(ゲルマニウム,シリコン)や構造(NPN,PNP)などにより分類される。また、使用方法とし てエミッタ接地、ベース接地、コレクタ接地がある。トランジスタには型名が付いているが、その付け方は、次のような形式で決まっている。

(型名の例) 2SC 2120 Y

第1項:

2SA****PNP 高周波用トランジスタ
2SB**** PNP 低周波用トランジスタ
2SC**** NPN 高周波用トランジスタ
2SD**** NPN 低周波用トランジスタ

第2項: 最大4桁の番号で、日本電子機械工業会へ登録した順の連続番号

第3項: 改良や変更ごとにA,B,C,…の順に付ける。

(トランジスタの形状)

トランジスタには、エミッタ (E)、コレクタ (C)、ベース (B) の 3 つの足があり、2SC2120 の足の配置は図の通りである。

【実験1 (トランジスタ)】

トランジスタの接続法には、ベースを入出力側の共通端子とするベース接地と、エミッタを共通端子とするエミッタ接地、コレクタを共通端子とするコレクタ接地の3通りの接続法が考えられるが、前者2つの接続法がよく用いられ る。 実験では、トランジスタ 2SC2120 を用いてエミッタ接地回路における出力特性、および入力特性を測定する。

図1:エミッタ設置の回路図

 実験1−1    出力特性(Ic−Vce 特性)の測定

  1. まず、RB= 100 kΩの抵抗を用いて、図1のような回路を組む。
  2. VCCの電圧は、0〜6.0 [V]まで0.5 [V]刻みで変更する。
  3. 図1の端子a,bには、DMM の電流計がつながるように接続し、電流IB を表 1 に記入する。このとき、電圧VCC = 0[V]とする。 (図2
  4. 次に、端子c,dにDMMの電流計がつながるように接続し、電流IC を測定する。このとき、VCCは、0〜6.0 [V]まで表1のように変化させて測定する。(図2
  5. 抵抗RBを51[kΩ]、33[kΩ]、22[kΩ]と変えてみて、同様に測定する。


表1:出力特性の測定


 2: 出力特性測定のための回路



 

 実験1−2    入力特性Ib−Vbe 特性の測定

  1. まず、図3 のような回路を組む。
  2. VBB = 0.4 [V]のとき、電圧VCE を測定し、表2に記入する。
  3. VBBを0.4〜0.64まで表2のように変化させ、そのときのVBE の大きさを測定する。
  4. VBBを0.4〜0.64まで表2のように変化させ、そのときのVRB の大きさを測定する。
  5. IB = VRB ∕RB の式を用いて電流IBを計算し、表2に記入する。


表2:入力特性の測定


 3: 入力特性測定のための回路


【課題1】

    

  1. MultiSIM上に作成した実験回路をハードコピーして貼り付けること。 表1,表2を完成させること。
  2. 表1の出力特性のデータを利用して、図 4 のような出力特性(IC−VCE特性)のグラ フを作成せよ。
    ただし、ここでは、VCCの電圧を VCEと見なすものとする。
  3. 表2の入力特性のデータを利用して、図 5 のような入力特性(IB−VBE特性)のグラ フを作成せよ。
  4. 電流伝達特性は、コレクタ電圧を一定に保ち、その状態におけるトランジスタのベース電流 IBとコレクタ電流 ICとの関係をいう。
    出力特性の VCE = 5[V] に注目し、 5[V] に おける縦軸上で曲線と交わる点の IBとそれに対応する ICを読み取り、
    IBとICとの関係を表す電流伝達特性のグラフを作成せよ。ただし、 IBを横軸に、ICを縦軸に取ること。
  5. 電流伝達特性のグラフより、コレクタ電流 ICは、ベース電流 IBの何倍に増幅されているか。
  6. hパラメータの hFE について調べよ。

4:  出力特性 5:  入力特性

【実験2 (電子回路)】

図6に示す小信号増幅回路(エミッタ接地増幅回路)をMultiSIM上に作成しなさい。

          図 6:小信号増幅回路

左にある黄色の端子が入力端子である。入力端子には関数発生器(Function Generator)を接続する。

関数発生器は、+端子をコンデンサへ、−端子をアースへ接続し、真ん中の共通端子もアース側へ接続する。

右にある黄色の端子が出力端子である。出力端子には、オシロスコープを接続する。

左の入力端子から信号波形を入力すると、右の出力端子から増幅された波形が取り出される。

トランジスタ増幅回路は、トランジスタだけでなく他にいくつかのパーツを組み合わせて構成される。
ここでは、以下のような抵抗()とコンデンサ()といった素子を組み合わせてある。

記号 用途
Tr 2SC1815 小信号増幅用トランジスタ
Vcc 15[V] 電源電圧
R1 100[kΩ] バイアス用抵抗
R2 22[kΩ] バイアス用抵抗
RC 5[kΩ] コレクタ負荷抵抗
RE 1[kΩ] エミッタ抵抗
C1 10[μF] 入力用カップリング電解コンデンサ
C2 10[μF] 出力用カップリング電解コンデンサ
C3 22[μF] 電源安定用バイパス電解コンデンサ
C4 0.01[μF] 電源安定用バイパスセラミックコンデンサ

 

 実験2−1    小信号増幅回路の特性の測定

図6の増幅回路をMultiSIM上で作成し、関数発生器から振幅100[mVp]の正弦波を発生させ,周波数を1Hz〜10MHz
 (1, 10, 100, 1k, 10k, 100k, 1M, 10M) まで段階的に変化させて、出力振幅を記録する。

【課題2】

  1. MultiSIM上に作成した実験回路をハードコピーして貼り付けること。
  2. 入力周波数を変化させたときの出力電圧を表にしなさい。
  3. 片対数グラフを用いて、対数軸に周波数を、もう片方の軸に電圧増幅率をプロットし、周波数特性のグラフを作成せよ。
    さらにそのグラフを読み、低域遮断周波数f_Lと高域遮断周波数f_Hを求めよ。ただし、遮断周波数とは、 電圧増幅率が
    1/sqrt(2)倍に落ちる周波数を言う。
  4. 測定した電圧増幅率AVを電圧利得GV(dB:デシベル)で表すといくらになるか。(式も記入すること)


TOP

実験Tテーマ一覧へ