Privacy Grid

概要

個人情報や私的な情報の漏洩が相次ぎ,情報技術に対する社会の不信感が高まりつつある昨今, 私的な情報を保護しつつ,個人に適応した問題解決やサービスを実現する情報技術の確立は重要な課題である. 近年の携帯電話は,電話やメールの送受信履歴,電話帳,ブックマーク,スケジュール, 搭載されたカメラで撮影した画像や動画像,Global Positioning System(GPS)を利用した移動履歴など, ユーザの嗜好や私的な情報をより多く含むようになった. 本稿ではこれらの情報をプライバシと呼ぶ.

複数のユーザのプライバシを参照する問題解決モデルを開発することにより, 各ユーザの私的な情報を利用して学習を行う認証・識別プログラムの自動生成や, 各ユーザの嗜好を反映した合意形成システムの実現が期待できる. しかし,プライバシを他人に知られることは好ましくなく,プライバシを安全に利用するシステムが望まれる.

本研究では,プライバシを携帯電話上に保持したまま,それらを利用した分散組合せ最適化を行うモデル「プライバシ・グリッド」を開発する. プライバシ・グリッドは,生成・検定型の問題解決を,計算機及び複数の携帯電話上で分散実行するものである. 通常の計算機(マスタ)上での解候補の生成,および,携帯電話(ワーカ)上での解候補の評価を繰り返すことにより, プライバシを解候補評価に安全に利用することができる. プライバシがユーザの携帯電話から外部に送信されることはないため,ユーザにとって安心感がある.

本研究に関する知的財産

「解探索装置、適応度評価装置、最適化システム、解探索法、適応度評価方法及びプログラム」
小野智司,中山茂,片山公博,特開2006-277137

研究助成

「私的な情報を安全に参照する分散問題解決方式」
小野智司,中山茂,岩川建彦,倉田奨励金((財)倉田記念日立科学技術財団)内定

References

小野智司,片山公博,中山茂:
“携帯電話上のプライバシを利用した分散組合せ最適化”,
電気学会論文誌C, Vol.127, No.5, pp.793-798 (2007).

本研究に関する問い合わせ先

小野 智司
ono@ics.kagoshima-u.ac.jp

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