果樹農家にとって、その年にどれくらいの果実が収穫できるか(収量)を予測することは、経営を左右する極めて重要な作業です 。その指標の一つとして、樹木そのものの「体積」を測る必要があります 。
これまでの現場では、樹木の「幅」や「高さ」をメジャーで測り、それらを掛け合わせておおよその体積を計算していました 。しかし、樹木の形は一本一本異なり、デコボコしていたり枝が複雑に伸びていたりするため、単純な計算には限界がありました 。また、測る人によって誤差が出てしまうのも大きな悩みでした 。そこで私たちは、「デジタルカメラで撮影した写真から、樹木の正確な3Dモデルを作り出す」という解決策を提案しています 。
この研究の鍵を握るのは、バラバラの写真を立体へと変換する「魔法の計算」です 。
SfMは、いろいろな角度から撮った写真に写っている共通点をAIが見つけ出し、カメラの位置と物の形を同時に割り出す技術です 。
SfMで作ったモデルはまだスカスカの状態であるため、そこにMVSという技術を使って厚みを持たせます 。
写真から作った3Dモデルは、当初は表面だけの「中身が空っぽな風船」のような状態です 。そこで本研究では、表面データに囲まれた内側を「中身が詰まっている」と判定してデータを補完し、本物の木に近い立体モデルを完成させました 。さらに、サイズが既知の段ボール箱を一緒に撮影することで、デジタル上のモデルを実寸大に調整する(スケール補正)工夫も行っています 。
実験の結果、この手法で木の形をデジタル再現し、その体積を数値として捉えることに成功しました 。現在は計算が少し小さめに出てしまうといった課題もありますが、補正の精度を高めることでさらなる進化を目指しています 。
もし、スマホで写真を撮るだけで瞬時に「今年の収穫予測は◯◯キロです」と表示されたら…… 。そんな未来では、農家の長年の「勘」が、誰もが共有できる「確かな数字」へと変わります 。農業と3次元技術が融合した、スマートでクリエイティブな農業の姿がすぐそこまで来ています 。