球技スポーツ映像の自動解析の研究

1.研究の背景と目的

我々の研究室では、動画像の検出、追跡による動画像の理解を主なテーマの一つとしている。新たにスポーツ映像の自動解析のシステムへ向けての開発に着手した。追跡には明度ヒストグラムを用い、スポーツ映像中に表示されるボールやシーンチェンジを、高精度かつ実時間で追跡、検出をすることを目指した。人気があり、ソースを入手しやすいため、サッカーを選び、全自動のボール追跡、シーン検出を行った。

2.サッカーボール追跡、シーン検出システムの流れ

明度ヒストグラムを用いたボール追跡(左)、シーン検出(右)の各処理の流れを以下に示す。

ボール追跡(左)のシステムは、サッカー映像中の各シーンにおけるサッカーボールを自動的に検出することを目的としている。従来の問題となっていた一度ボール追跡が失敗すると再び追跡できないという問題は解決できる。ボールのヒストグラムをあらかじめ測定し、探索領域をボールの存在可能な場所に設定し、20分割されたブロックをつくり、ボールの明度ヒストグラムと最も類似しているブロックを検出し、そのブロックをボール位置として黄枠で表示した。 シーン検出(右)のシステムは、全景映像かズーム像かを自動で判別し、サッカー映像の全画面を探索領域に設定し、映像が芝生の多い全景映像であるかズームアップした。判別内容は下枠に太枠で表示した。

 3.実験結果と考察

W杯ベルギー*ブラジル戦前半を例にとり結果を示す。図2.1はボール追跡例を、図2.2はシーンチェンジ検出例である。


図2.1 ボール追跡アプリケーション動作時


図2.2 シーン検出アプリケーション動作時

ボール追跡のシステムを1シーン(7秒)を繰り返したソースにスキャンさせたところ、ボール検出率は78%、処理速度は0,4FPSであった。 次に、シーンチェンジ検出システムをこのソースの5シーン(4回切り替わる)をスキャンさせたところ、シーンチェンジ検出成功率は99%だった。観客席が画面の半分をしめる場合に検出に失敗したが、それ以外はほぼ100パーセントの検出率だった。この試合の芝の状況はすべて晴れで一定の明度を示し、10FPSで高速にシーンチェンジ検出を実現できた。 現在の問題点として、ボール追跡システムが0,4FPSと低速な点で、また今のところボールのヒストグラムを手動にして作成している。 今後はボール追跡システムの高速化、アルゴリズム改良によるボール追跡検出率の向上を目指す。

4.結論

本研究は、明度ヒストグラムを用いることで、今までにないボール追跡、シーン検出システムを考察し、W杯サッカー映像を用いて実験を行った。今後はより高度化を行い、将来我々がスポーツ映像をデジタル地上波、衛星放送などで観戦を身近にできる環境になり、映像と同時に配信される文字情報が選手の動き、ボール支配率、勝敗などを自動認識した結果を表示する骨組みとして位置付けをしていきたい。