明度分布変化解析による状況変化検出の研究

<1−研究の背景と目的>

近年、計算機およびテレビカメラ等映像機器の性能向上化が進み、従来より研究が進められてきた計算機による画像認識技術が、様々なところで利用される状況が整ってきている。我々の研究室では『人間とコンピューターが自然かつ自在にコミュニケーションをとれる環境』システム構築を長期目標として、研究開発をおこなっている。この研究を、親和的情報空間(FICS: Friendly Information Cyber Space)と呼ぶ。 本研究ではシーン中にどのような事態が起こっているかを認識する画像状況認識エージェントの開発を目標におき、計算機の前に設置されたカメラ画像から取得した明度ヒストグラム情報を解析することにより、計算機ユーザーの出現または退席などの突発的な状況変化を自動的に検出するプログラムの開発を行った。

<2−処理の流れ>

開発したプログラムの処理の流れを以下に示す。起動時にまず、人物の存在しない画像を入力し、その関心領域内の明度ヒストグラムを初期ヒストグラムとして記憶しておく。次に取り込んだ画像中に設定した関心領域内の明度分布ヒストグラムを取得し、この現時点の明度ヒストグラムを差分した差分ヒストグラムを得る。
そして差分ヒストグラム値の総和を求め、しきい値と比較することにより状況変化を検出し、最後に音響で通知する。

<3−環境>

情報棟2Fの実験室において、6ヶ所で2人の人物の入退出による状況変化を検出する実験を行った。

<4.実験結果および考察>

図1,2にプログラム演習室で行った実験結果の例を示す。


図1.人物が不在の場合


図2.人物が出現した場合

図1で示すように人物の存在しない場合は、初期ヒストグラムと現在ヒストグラムはほぼ一致するため差分ヒストグラムは出現せず『変化無し』と判定される。これに対し人物が出現した場合は、現在ヒストグラムが大きく変化するため差分ヒストグラムが出現し、『人物検出』と認識された。全6ヶ所において100%の精度で人物検出が行えた。 

<5.まとめ >

人物の状況変化を自動的に検出する画像状況認識エージェントプログラムの試作を行い、実験室で評価実験を行った結果、人物の入退出による状況変化を全シーンで正しくとらえることができた。