動画像における自動領域分割の研究

<1−研究の背景と目的>

我々の研究室では、「人間がコンピュータと自然かつ自在にコミュニケーションを取れる環境」の構築を長期目標として研究開発を行っている。この環境を親和的情報空間(FICS: Friendly Informative Cyber space)と呼ぶ。この親和的情報空間を構築するエージェント群中の画像認識エージェントに属する。本研究は明度分布や色相分布を用いて、シーン中に存在する物体を、安定・高精度かつ実時間で抽出する自動領域分割を実現する汎用的な手法を提案することを目的とした。

<2−自動領域分割処理の流れ>

明度分布及び色相分布を用いた自動領域分割の各処理の流れを以下に示す。


図1 自動領域分割処理の流れ

<3−実験結果と考察>

桜島シーンを例に取り、図2.1に原画像を、図2.2に明度分布を用いた自動領域分割結果と明度分布及び色相分布を用いた自動領域分割結果をそれぞれ示す。


図2−1 桜島の原画像



図2.2 色相分布を用いた自動領域分割

明度分布を用いた自動領域分割の分布数は上限値の8であった。明度分布に基づく自動領域分割結果としては妥当であるものの、日照条件による局所的変化のため、桜島の部分を5つに過剰に別個分割していた。色相分布を用いた自動領域分割の分布数は6であった。桜島の大半の部分が領域分割の対象となっていることが確認された。 次に、桜島を手動で分割した領域を真値とした領域と、両手法で分割した領域を比較して、桜島の領域をどれだけ正確に分割しているか誤分割率を用いて定量評価した。その結果を表に示す。

 

明度分布を用いた領域分割

色相分布を用いた領域分割

桜島の領域

38.4%

1.56%

表から、明度分布を用いた自動領域分割では、日照の日当たり具合の局所的変化により明度範囲が異なり、桜島の領域が複数に分かれてしまったため誤分割率が高くなった。これに対して色相分布を用いた自動領域分割では、色相情報が明度ほどに日照条件の影響をあまり受けないため、桜島の領域をほぼ正しく抽出しているため誤分割率が低かった。この事から、画像認識エージェントに用いる手法としては、色相分布を用いた自動領域分割のほうが優れているといえる。

<4−結論>

本研究で、明度分布及び色相分布を用いることで、準リアルタイムで、画像の自動領域分割を行う手法を開発し、実画像を用いた実験により妥当性を確認した。この結果より、本研究で開発したシステムは、画像認識エージェントのプロトタイプとして有効であると考える。