動画像処理・認識による視覚障害者補助システムの研究・開発
1−背景
現在,視覚障害者を補助する手段としては,@白杖,A盲導犬,が挙げられる.しかしながら,@は中途失明者にとって慣れるのに時間がかかる,Aは絶対数が少ない,といった問題がある.
また,B工学的補助手段として,盲導犬ロボット,ソナー,画像処理利用,超音波眼鏡などが挙げられるが,価格,性能,使い心地の面から実用化に至っていない.
2−研究・開発目標
そこで,視覚障害者が白杖を使いつつ,自身から離れた外界の状況をも知ることができるような環境を提供することを,研究・開発目標とする.
具体的には,視覚障害者の頭部にステレオカメラを装着し,カメラから得られるステレオ動画像をウェアラブルPCで画像処理・認識することにより,屋内外の状況を視覚障害者に音声・振動などの手段でリアルタイムに伝達するシステムを研究・開発する.
3−機能
研究・開発を行う機能は以下の表1のとおりである.
表1 研究・開発機能 機能 対応する 盲導犬への命令 出入口を見つけ,ドアノブの位置を示す ドア エレベータを見つけ,扉の正面に誘導する エレベータ ボタンを見つけ,その位置を示す ボタン 段差を見つけ,その位置を示す コーナー 階段を見つけ,その開始・終了位置を示す ブリッジ 前方の障害物を検出・回避する (命令なし) 横断歩道を見つけ,その位置を示す 付加機能 信号を見つけ,その状態を示す 付加機能 屋外での現在位置を示す 付加機能
4−研究・開発状況
3年計画で研究・開発を進める予定である.
2002年度は1年目である.2003年2月末時点で,オプティカルフローを用いた前方移動障害物検出のプロトタイプの開発を完了した.検出アルゴリズムについては,参考文献[2]を参照.2003年3月末までに前方移動障害物の3次元位置の検出機能を組み込む予定である.
次年度以降は,残りの機能について順次研究・開発を進め,システムとして統合していく予定である.
図1:前方移動障害物検出結果(図中の青色部分)
参考文献
[1] 松井進,“盲導犬ハンドブック”,文藝春秋社,(2002.5)
[2] 古賀,片山,渡邊,山本,渡部,岩田,“移動観測系における移動物体検出・呈示方式の検討”,情報処理学会研究報告 2003-CVIM-136,pp.91-98,(2003.1)