複数アクティブカメラ制御による複数移動物体追跡の研究

1.研究の背景と目的

近年、計算機およびテレビカメラ等映像機器の性 能向上化が進み、従来より研究が進められてきた計算機による画像認識技術が、様々なところで利用される状況が整ってきている。我々の研究室では『人間とコンピューターが自然かつ自在にコミュニケーションをとれる環境』(親和的情報空間:FICS)構築を長期目標として、研究開発をおこなっている。 本研究ではシーン中に出現した移動物体が視野内から逸脱しないように追跡し、且つ他の移動物体が出現した場合も安定に追跡を継続できるような移動物体追跡エージェントの開発を目標におき、実験室内に設置された二台のクライアントPCそれぞれに一台ずつ接続されたアクティブカメラの画像に背景差分、時系列差分を行い、カメラ視野内の移動物体それぞれの位置を検出し、目標の移動物体を視野の中央に捉えるようアクティブカメラの方向を制御することにより追跡し、同時に三次元位置情報をサーバーに表示するプログラムの開発を行った。

2.昨年度の研究結果とその課題

 背景画像を複数保持しておいて一定の移動ピッチ でカメラを制御し、単数の移動物体について単数の カメラが画像全体の差分の重心を追ってゆくという システムであった。予め背景画像が準備された離散的な位置では安定に追跡できる反面、自在な追跡や複数移動物体、カメラへの拡張が出来ないという問題点があった。今年度は時系列差分と探索処理を取り入れる事により、この問題の解決を図った。

3.処理の流れ

 開発したプログラムの処理の流れを以下に示す。 まず、背景差分によって対象物体の色相情報、明度情報を取得する。次のフレームからは時系列差分によって シーン中に現れている物体を検出する。{この際、差分として現れた画素はクラスタリング(グループ分け)されており物体の数と大きさを把握できるようになっている} このシーン中のそれぞれの対象物体と前の画像で対象物体がいたエリアにおける明度ヒストグラムを解析し、 十分な照度が得られている場合は色相ヒストグラム。十分な照度が得られていないと判断された場合、 明度ヒストグラムを用いて 探索を行うことにより移動物体を追跡し、その重心位置に向かってカメラを移動させる。これを繰り返すことにより複数移動物体中で目標の追跡を行う。

4.環境

情報棟2Fの実験室3において、天井の2ヶ所に吊られたカメラを用いて、追跡の実験を行った。 ただし移動位置は無制限。

5.実験結果および考察

図1、2に天井に設置したカメラを用いて2F実験室で行った実験結果の例を示す。


図1 俯瞰図へプロッタされた対象物体の座標(補足率75パーセント)


図2 対象物体のみの追跡(補足率100パーセント)