担当:大野 裕史 助 教 内線8448 E-mail: ohno@ibe.kagoshima-u.ac.jp
5F 情報システム工学講座(2)
コンピュータや生体の情報処理装置(脳神経)は電気を情報の媒体として機能しています.
コンピュータを使えることはもちろん大切ですが,その動作原理を知ることも必要です.
電気系エンジニアの一員として,電気とは何か?を知っておきましょう.
0) 実験室・実験器具の使い方について理解する.
1) クーロン力,電場(電界,Electric Field)について理解する.
2) 平行板コンデンサの原理と特性について理解する.
下の動画を見てみよう.
これはフランクリンモータと言います.
実験1-1. 机にある道具を使ってこのフランクリンモータを作ってください.
作ったフランクリンモータの写真を撮ってレポートに貼り付けること.
作成できたら池田先生に見せてください.
池田先生が審査員とし、一番良くできたフランクリンモータを作成した班は+10点とします.
なぜ回るのか?「静電気で回ってる」,その通り.
考察1-1. しかし,なぜ静電気が起きる(摩擦帯電する)と動くのか?図を描いて説明しなさい.
そこにはどんな力が働いているか? その定義式を書いて説明しなさい.
※注 考察とはあなたたちの考えを述べることではありません.科学的根拠のある説明をしなさいということです.
質量に働く力は万有引力,万有引力の働く場と重力場という.
電荷に働く力はクーロン力,クーロン力の働く場を電場(電界)という.
重力場が存在するとそこには位置エネルギーが存在する.同様に
電場が存在するとそこに静電エネルギー(静電ポテンシャル)が存在する.
このエネルギーはエネルギー保存の法則により,変換されるが,勝手に新たに生まれたり消えたりはしない.
静電エネルギーも同様,電荷(電子)の運動エネルギー(電流)になったり,電球の発光・発熱(熱エネルギー)に
変換されたりする.そしてポテンシャルのまま,一時的に蓄えておくこともできる.いわゆるコンデンサ(キャパシタ
Capacitor)である.
実験1-2-1. 平行平板コンデンサを作ってください.
下からサランラップ,アルミホイル,サランラップ,アルミホイル,サランラップ,の順に重ねて,
それぞれのアルミホイルから端子(アルミホイルでよい)を出して,全体をくるくる巻けば出来上がり.
(アルミホイル同士が接触するとコンデンサにならないので注意)
またラップとホイルの間に空気が入ってしまったり,すき間が大きいと静電容量値が極端に小さくなってしまうので,
よく押さえつけながら巻いていきましょう.
アルミホイルの大きさ(縦横の寸法)を測り,記録しておくこと.
実験1-2-2. 平行平板コンデンサの静電容量を計ってください.
電気系実験で使用する器具には,
・電流計・電圧計などが一体になったDMM(Digital
Multi Meter)
・波形を観測するオシロスコープ
・試料に電流を流したり,電圧をかけたりする電源(直流電源,交流電源,ファンクションジェネレータ)
・回路をハンダ付けなしに簡易的に作成する為のブレッドボード
などが必要であるが,ここではそれら全てがall in oneの NI Elvisを使う.
側面と前面にあるスイッチを入れると下のようなダイアログが出るので,,NI
ELVISmx Instrument Launchyerを選択してOK.
このような画面が出なかった場合,スタートメニュー→すべてのプログラム→National Instruments→NI ELVISmx→NI ELVISms Instrument Launcher
を選択して,手動でランチャーを立ち上げる.
すると,下のようなランチャーが出現する.
静電容量の測り方
下のように端子と自作コンデンサをつなぎ,ランチャーのDMMを押す.
テスターのような画面が出るので,コンデンサのマークをクリックし,Runボタンを押す.
コンデンサを手で押さえつけたりすると値が大きく変わるので,そっとしておきましょう.
大野が作ったコンデンサは,0.1μFくらいでした.計測した静電容量値を記録しておきます.
実験1-2-3.平行平板コンデンサの電気的特性を見る.
特性を図るための回路.
まず抵抗Rの抵抗値を計る.
先ほどとはつなぐ端子が違うので注意.(バナナクリップで,VΩとCOMにつなぐ) その後DMMを使って抵抗値を測定する.
この抵抗は10KΩ程度でした.
オームの法則は,電流密度J=σE(σ:電気伝導度[A(Vm)^-1],E:電界[V/m]),
それを書き直すと,電位差V=IR(I:電流[A],R:抵抗値[Ω])
抵抗値が0に近づくと電流が過剰に大きくなる危険があります.
回路に直流電圧をかける.
VinをDCpowerSupplyにつなぎ1.0Vの直流電圧をかける.
DMM(Digital Multi Meter)を使ってVin,Vout,および,回路に流れる電流を計測する.電流は流れますか?
交流電圧をかける.
Vinをファンクションジェネレータ(FGENと書いてある端子)につなぎ,Vinの様子をオシロスコープのch0,Voutの様子をオシロスコープのch1で
観測する.ファンクションジェンレータからは実効電圧(RMS)が約1.0Vの正弦波を入力する.入力周波数を変化させるとVoutの
電圧はどう変化するか観測する.周波数が高くなるにつれて出力電圧が下がっていくのがわかると思います.
特に出力実効電圧(Vout)が入力実効電圧(Vin)の1/√2になった時の入力波形の周波数を記録しておく.
最後にコンデンサを真ん中から(端子を切り取らないように),切ってみよう.そして静電容量を測る.さて?
考察1-2.
電磁気学の電場・定常電流について図書館で参考書やインターネット上で検索し,自分で調べ,理解しましょう.
参考: 岩波書店 物理入門コース 電磁気学T,U 長岡洋介著
裳華房 電磁気学 中山正敏著 など.
1) 真空中の距離dを隔てた2つの電子に働くクーロン力はいくらか?また力の働く向きは?
真空の誘電率をε0,電子の電荷をeとする.
2) 平行板コンデンサの静電容量C[F]は,誘電率をε[Fm^-1],端子面積S[m^2],端子感覚をd[m]として,C=εS/dで決定される.
自作したコンデンサについて誘電率を真空の誘電率ε0=8.85×10^-12[Fm^-1],サランラップの厚さを10μm として計算しなさい.
3) 2)で求めた容量と実際に計測した容量との誤差は?またその誤差の生じた原因は何か?
4) 平行板コンデンサ回路に直流電圧1.0VをかけたときのVoutおよび回路に流れた電流値はいくらか?なぜそうなるのか?
説明しなさい.
5) 平行板コンデンサ回路に交流実効電圧1.0Vをかけたとき,入力正弦波の周波数を上げると出力波形はどう変化したか?
またなぜそのような変化が起きるのか?電圧値の変化と時間軸のずれと2つについて言及しなさい.
6) 平行板コンデンサの入力電圧と出力電圧には以下の関係がある.
左辺を1/√2,Cに計測した静電容量,Rに計測した抵抗値を代入し,ω[rad](角周波数)を求めよ.
ω=2πf (f:周波数[Hz])である.周波数を計算せよ.
実際に観測した周波数と比較して,その誤差はいくらか?またその誤差の生じた原因は何か?
7)計測値か基準値に対して1/√2になることを-3dB(デシベル)になる,という.デシベルとはどんな単位か?